外国人の労務管理の6つの注意点とは?英語対応可能な社労士を選ぼう★
「自社にマッチする優秀な応募者であれば国籍を問わず採用したいけれど、適切な労務管理ができるか心配・・・」
などと、お悩みのかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
言語の問題がクリアできれば、もっと広い視野で採用活動ができるかもしれません。
ただし、言語の問題以外にも、外国人を雇用する際にはいくつか注意しなければならないことがあります。
本記事では、外国人の労務管理における6つの注意点を紹介します。
外国人の労務管理は日本人とどう違う?
外国人の労務管理は、国の制度や文化、生じやすい問題などの点で、日本人の労務管理とは異なってきます。
外国人を雇用する前に、主に以下の6つの注意点を押さえておきましょう。
- ビザ・在留資格
- 文化・宗教
- 労働条件・最低賃金
- 雇用保険・社会保険
- 就業規則
- 一時帰国
ビザ・在留資格
外国人が日本に入国するための資格が「VISA(ビザ)」、日本に在留するための資格が「在留資格」です。VISAは、外国人が日本に入国する前に、海外にある日本大使館や日本領事館で発行されます。
一方、在留資格は外国人が日本に滞在するための資格で、日本の法務省入国管理局が取り扱っています。申請方法は主に2パターンあり、入国する前に日本にいる代理人が申請する方法と、入国後に外国人自身が申請する方法です。
在留資格には、現在29種類あります(2022年11月現在)。「活動に着目した資格」と「身分・地位に着目した資格」の大きく2つに分けられます。さらに「活動に着目した資格」は、就労の可否によって3つに分けられます。
- 活動に着目して分類された在留資格(就労可):外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習
- 活動に着目して分類された在留資格(原則就労不可):文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在
- 活動に着目して分類された在留資格(指定した活動のみ就労可):特定活動
- 身分・地位に着目して分類された在留資格(活動制限なし):永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
外国人を雇用して働かせるためには、在留資格の有無、就労可能な資格であり当該業務と合致しているかどうか、在留資格の有効期間をチェックすることが必須です。
必要に応じて、在留資格の変更や期間更新手続きを行いましょう。
文化・宗教
外国人と日本人では文化や宗教が異なっているため、できる限り定着してもらうためにはこれらの相違に配慮することが大切になってきます。
宗教上の理由から従事する業務に制約がないか、礼拝の時間が必要かどうか、社員食堂のメニューに食べられるものがあるかなど、日本人の労務管理とは違う観点から社内体制を見直すことが必要です。
労働条件・最低賃金
当たり前のことですが、日本国内においては外国人にも労働基準法や最低賃金法が適用されます。これは、在留資格の有無や有効期間の範囲内かどうかに関わりありません。
雇い入れ時には法令で定められた労働条件をしっかりと明示して説明し、当然ながら残業させた場合には残業代を支払って最低賃金を下回らないようにしましょう。
とくに「業務および就業の場所」についてはご注意ください。
日本の法令では、雇い入れ直後の「業務および就業の場所」を明示すれば十分で、その後配置転換を行うことは一般的です。
しかしながら、当該外国人の国では雇用契約において「業務および就業の場所」が特定されることが一般的かもしれません。そのため、配置転換の可能性があるのならば、その点しっかりと説明しておくことをおすすめします。
雇用保険・社会保険
なお、配置転換の際には在留資格の変更手続きが必要かどうかを確認することも忘れないようにしましょう。
労働基準法や最低賃金法の適用と同じく、外国人であっても要件に該当すれば雇用保険や社会保険に加入する必要があります。これも、在留資格の有無や有効期間の範囲内かどうかは関係ありません。
原則として、週20時間以上働かせるときには雇用保険、週30時間以上働かせるときには社会保険の資格取得手続きを行います。
雇用保険に関しては、「外国人雇用状況」をハローワークに届け出ることも必要です。被保険者の場合には取得届の備考欄に必要事項を記載します。一方、被保険者にならない場合には「外国人雇用状況届出書」を使用します。
なお、社会保険に関しては、所定労働時間が週30時間未満の短時間労働者でも加入させなければならないケースもありますので、ご注意ください。
また、社会保険について日本と「社会保障協定」を締結している国の国籍である外国人が日本で就労する際には、本国で社会保険に加入していれば日本の社会保険に加入しなくてよいケースがあります。
社会保障協定を締結している国については、日本年金機構のホームページでご確認ください。
就業規則
常時10人以上の従業員を使用する会社(厳密には「事業所」)は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出て、従業員に周知しなければなりません。
外国人を雇ったからといって必ずしも当該外国人の母国語で就業規則を作成しなければならないわけではありませんが、当該外国人の日本語レベルによっては就業規則の内容を理解させるための配慮が必要といえます。
なぜなら、雇い入れた外国人が就業規則の内容を理解できていなければ、就業規則を周知したことにはならないからです。
分かりやすい説明書や平易な日本語による説明書、英語への翻訳版などを作成し、就業規則の内容の理解を促すとよいでしょう。
一時帰国
一定期間外国人を雇用している場合、一時帰国を希望されることがあります。一時帰国を認める際には、在留資格の確認が必要です。
確認方法は、大きく以下の4つのケースに分けられます。
- 中長期在留者で出国期間が1年以内:再入国許可が不要
- 中長期在留者で出国期間が1年超:出国前に出入国在留管理庁で再入国許可申請をする
- 在留期間が3ヶ月以下:出国前に出入国在留管理庁で再入国許可申請をする
- 在留資格が「短期滞在」:再入国許可の対象外なので次に入国する際は新規の入国と同じ取り扱いとなる
一時帰国のための年次有給休暇の取得については、基本的に日本人の労務管理と変わりありませんが、在留資格が「特定技能」の場合には雇用契約の内容として一時帰国希望時に必要な有給休暇を取得させることを含めなければなりません。
外国人の労務管理には英語対応可能な社労士を選ぼう
今回紹介した外国人の労務管理における6つの注意点のうち、とくに労働条件の明示・雇用契約書の締結と就業規則については、母国語までいかなくとも、少なくとも英語で作成したほうが適切である場面が生じてくることと思います。
労働条件についての齟齬は、のちのちの信頼関係に大きな影響を与え、トラブルに発展する可能性があるからです。
英語で雇用契約書や就業規則を作成したいとお考えの方は、英語に対応している社労士を選びましょう。
当サイト「社労士ステーション」では、「英語対応」にチェックを入れて社労士事務所を検索することができます。
外国人の労務管理の注意点まとめ
外国人の労務管理においては、「在留資格・ビザ」「文化・宗教」「労働条件・最低賃金」「雇用保険・社会保険」「就業規則」「一時帰国」の6つの点において注意しなければなりません。
とくに労働条件の明示と就業規則の整備に関しては、英語を使用することが適切なケースもあります。この場合、英語対応可能な社労士に依頼すると便利です。
言語の問題がクリアできれば、採用活動の幅を広げられるかもしれませんよ。