障害年金申請のむずかしさと社労士に依頼するメリット・デメリット
「障害年金」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
障害年金とは、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取ることができる年金です。
障害年金を申請する人の割合はそう多くはないかもしれませんが、申請する場面に遭遇する可能性は誰にでも等しくあります。
ところが、障害年金の申請は「むずかしい」とよく言われます。そこで障害年金申請の専門家である社会保険労務士(以下、社労士)の出番です。
本記事では、障害年金の受給要件と申請が「むずかしい」と言われる理由、社労士に申請を依頼するメリット・デメリットを紹介します。
障害年金はどんなときに受給できる?
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取ることができる年金です。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。それぞれ、以下の違いがあります。
・障害基礎年金:病気やけがで初めて医師の診療を受けたとき(以下、初診日)に国民年金に加入していた場合に受け取れる障害年金
・障害厚生年金:初診日に厚生年金に加入していた場合に受け取れる障害年金
障害基礎年金の受給要件は?
障害基礎年金と障害厚生年金の受給要件は似ていますが、若干異なっています。
まず障害基礎年金の受給要件としては、つぎの3つをすべて満たすことが必要です。
①初診日要件
障害の原因となった病気やケガの初診日が、「国民年金加入期間」「20歳前」「日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間」のいずれかの間にあること
②障害認定日要件
障害の状態が、障害認定日(※)または20歳に達したときに障害等級1級または2級に該当していること
③保険料納付要件
初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、当該被保険者期間のうち3分の2以上が保険料納付済み(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)か保険料免除期間であること(ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、保険料納付要件は不要)
障害厚生年金の受給要件は?
障害厚生年金は、つぎの3つの要件をすべて満たすと受給することが可能です。
①初診日要件
障害の原因となった病気やケガの初診日が、厚生年金保険の被保険者である間にあること
②障害認定日要件
障害の状態が、障害認定日(※)に障害等級1級〜3級のいずれかに該当していること
③保険料納付要件
初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、当該被保険者期間のうち3分の2以上が保険料納付済み(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)か保険料免除期間であること
※障害認定日とは
障害認定日とは、障害の程度の認定を行う基準日のことです。原則として、以下のいずれかの日を指します。
・請求する傷病の初診日から起算して1年6ヶ月を経過した日
・請求する傷病の初診日から起算して1年6ヶ月以内にその傷病が治った場合には、その傷病が治った日
なお、障害基礎年金・障害厚生年金ともに、③の保険料納付要件については、初診日が2026年(令和8年)4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において初診日の属する月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ当該要件を満たすことができます。
なぜ障害年金の申請はむずかしいのか
障害年金には、障害基礎年金・障害厚生年金ともに3つの受給要件があることをお伝えしました。
これらの受給要件を満たせば年金が支給されると決められているのに、なぜ障害年金の申請はむずかしいのでしょうか。
障害年金申請のむずかしさの理由には、主に以下の特徴が挙げられます。
・いつが初診日なのか証明しなければならない
・書類の記載内容の整合性をとらなければならない
・何度も年金事務所に足を運ばなければならない
いつが初診日なのか証明しなければならない
障害年金を申請するときには、まず、「当該障害の初診日は一体いつなのか」を証明しなければなりません。
医療機関で書いてもらう診断書や「受診状況等証明書」によって証明します。
障害が認定されるのは、原則として、少なくとも初診日の1年6ヶ月以降です。そのため、申請するときには1年6ヶ月以上前にさかのぼって初診日を特定することになります。
病院にカルテがしっかりと残っていない、病院が閉院してしまっている、転院した結果初診日が分からなくなってしまった、本人の記憶があいまいで覚えていないなどの理由で、初診日の証明
が困難になるケースがあります。
初診日があいまいなまま年金事務所で説明すると、あとから修正するのに苦労することもあります。
初診日を証明することの重要性をしっかりと認識しなければならないことが、障害年金申請のむずかしさの一つです。
書類の記載内容の整合性をとらなければならない
障害年金を申請するときには、上記で説明した診断書や受診状況等証明書のほかに、「病歴・就労状況等申立書」を提出する必要があります。
病歴・就労状況等申立書は、障害状態を確認するための補足資料という位置付けです。具体的には、傷病名・発症日・初診日・病歴状況・障害の状況などを記載します。
補足資料とはいえ、診断書や受診状況等証明書との整合性がとれていなかったり、病歴や障害の状況が詳しく書かれていなかったりすると、再提出が求められたり年金の支給が認められなかったりしてしまいます。
各種書類には「どのように書けばいいのか」「どの程度書けばいいのか」分からないところが、障害年金申請のむずかしさの理由です。
何度も年金事務所に足を運ばなければならない
障害年金を申請するには、何度も年金事務所に足を運ばなければなりません。必要な書類を最初から完璧に整えることがむずかしいからです。書類の訂正や再提出を求められたときにはなおさらです。
年金事務所のほか、診断書の発行のためには医療機関、住民票や戸籍の取得のためには役所にも出向くことが必要です。
これらを身体が自由にならない状態で行わなければならないところに、障害年金申請のむずかしさがあります。
社労士に障害年金申請を依頼するメリット・デメリット
主に3つの理由から、障害年金の申請は「むずかしい」と言われています。障害年金を申請したいけれど自分一人で行うのは自信がない・・・という方は、障害年金の専門家である社労士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。検討材料として、社労士に依頼するメリット・デメリットを紹介しますのでぜひ参考にしてください。
社労士に障害年金申請を依頼するメリットは以下の3つです。
・書類を適切に作成することができる
・手間を省くことができる
・審査請求・再審査請求ができる
一方、デメリットは以下の2つです。
・社労士に支払う費用がかかる
・申請実績のない社労士にあたる可能性がある
障害年金の申請は社労士の独占業務ですので、社労士に依頼すれば書類を適切に作成することができるでしょう。ご自身で調べたり役所に何度も問い合わせたりといった手間も省くことが可能です。審査結果に不服がある場合には、社労士が責任を持って審査請求・再審査請求まで行うケースもあります。
ただし、社労士に依頼したときには費用がかかってしまいます。着手金と成功報酬に分かれているケースが多く、それぞれ1〜3万円、年金の2ヶ月分が目安です。
また、これまで紹介した通り障害年金の申請はむずかしく、まったく申請実績がない社労士もいます。そのため、障害年金申請を得意としている社労士に依頼することが大切です。