【必見】定時決定の季節到来!記入例まで徹底解説
毎年6月終わりのじめじめとした時期といえば、定時決定の時期です。
労務担当者、社労士事務所の皆様はお忙しい時期ではないでしょうか?
年度が始まり入退社の事務手続き、5月から住民税の通知書が届き始め、6月からは「年度更新」の準備となります。さらに6月の給与が確定したら一気に「定時決定」の準備・提出です。
今回は、この時期に準備が始まる「定時決定」について解説していきます。
- 定時決定とは
- 申請方法
- 特殊なケースの対応
定時決定の概要
昇給などにより給与は日々変化していくものです。
「健康保険・厚生年金保険」の被保険者、70歳以上被用者の実際の報酬と今まで使用していた標準報酬月額との間に大きな差が生じないように、事業主は、7月1日現在で使用している全被保険者の3カ月間(4月~6月)の報酬月額を「算定基礎届」により届出し毎年1回、標準報酬月額を決定し直します。これを「定時決定」といいます。
標準報酬月額とは、報酬を1~50等級(厚生年金は1~32等級)に分けた月額です。
保険料を計算する際の基礎となります。計算方法は以下です。
「標準報酬月額」×保険料率(健康保険料率は都道府県ごとに異なります)
定時決定の対象外
(1)6月1日以降に資格取得した方
(2)6月30日以前に退職した方
(3)7月改定の月額変更届を提出する方
(4)8月または9月に随時改定が予定されている旨の申出を行った方
※(3)(4)に関しては、対象外である旨を備考欄に記載し提出します。
いつから反映されるのか
定時決定により決定された、従業員それぞれの「標準報酬月額」はすぐに反映されるわけではありません。
その年の「9月の標準報酬月額」から決まった等級を反映させることになります。9月頃に等級記載の通知書が届きますので、従業員情報や給与計算に反映する準備をしましょう。
対象となる報酬
定時決定では、4~6月に支給された報酬をもとに標準報酬月額が決定されますが、報酬といっても、支給されたものが全て報酬となり計算されるわけではありません。何が報酬で、何が報酬とならないかについてもみていきましょう。
報酬となるもの
・基本給
・役職手当
・通勤手当
・住宅手当
・年4回以上の賞与
報酬とならないもの
・解雇予告手当
・傷病手当金
・労災の休業補償給付
・出張旅費
・年3回以下の賞与
上記のように分かれているので、定時決定を行う前段階で、【報酬となるもの】【報酬とならないもの】を分けなくてはなりません。
多くのクラウド給与システムでは、どの支給項目が「社会保険の報酬」の【対象となる】のか【対象とならない】のかを事前に設定する機能が備わっています。
定時決定前、他の業務でも忙しい時期に【対象となる】【対象とならない】の振り分けを直前に行わずとも、正しい額を定時決定に利用する事が可能です。
提出する書類は
提出書類:算定基礎届
提出先:事務センター または 管轄の年金事務所
提出期限:原則 7月10日 (令和4年度は10日が日曜日の為、7月11日となります)
6月中旬ごろに、日本年金機構から事業所宛に送付されてきますが、5月中旬時点でも従業員情報がすでに記載され送付されてくるはずです。残りの記入欄を埋めて提出しましょう。
記入方法について
①~⑥ 記入された書類が原則届きますので記入不要となる場合がほとんどです。
⑦昇(降)給 算定期間に昇給または降給があった場合に記載します。
⑧遡及支給 算定期間に遡及支給を行った場合に、「いつ」「どれだけ」遡及したのか記入します。
⑨・⑩支払月・日数 報酬の支払対象となった日数を記入します。
月給・週給:歴日数 ※欠勤ありの場合は、「所定労働日数ー欠勤日数」を記入
時給・日給:実際に働いた日数
⑪・⑫報酬 支給された報酬を記載します。
⑬合計 ⑪+⑫の合計金額を記入します。
⑭総計 算定対象となる月の合計金額を記入します。
・算定対象となる月とは原則支払基礎日数が「17日以上」ある月です。
短時間就労者15日以上(17日以上の月がある時は17日以上の月のみ見ます)、短時間労働者11日以上ある時が対象となります。
⑮平均額 総計÷算定対象月数 で求めた平均額を記入します。
ここまでが、基本的な記入方法の解説でした。基本の記入方法はきちんと頭に入れておきたいですね。
特殊なケース
場合によっては備考欄に詳細を記入する必要があるなど、特殊なケースも多々発生します。いくつか特殊なケースと、その対応方法について解説していきます。
賞与が報酬となる場合
前年の7月からその年の6月までに4回以上の賞与が支払われた場合。
この場合は、賞与が報酬となります。そのため賞与について記載しなくてはなりません。
対応方法
1.報酬欄 1か月あたりの賞与(賞与÷12か月) の金額をそれぞれの報酬に記載します。
2.備考欄 1か月あたりの賞与額・支払月を記載します。
一時帰休の取得した場合
一時帰休とは、企業の売上減少や経営難により、従業員を在籍させたまま一時的に休業させる措置の事です。
新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされ、一時帰休されたという会社も多数ありましたが、その際に「休業手当」を支給していたという会社が大多数にあたるかと思います。
この場合、7月1日時点で【一時帰休している場合】と【一時帰休の状況が解消している場合】で定時決定の方法が異なります。
・7月1日時点で一時帰休の状況が解消していない場合
休業手当等も含めて、通常の月と合わせて算定の対象とし、「備考欄9」に、いつから一時帰休しているのか、いつ休業手当等が支払われたのかを記載します。
・7月1日時点で一時帰休の状況が解消している場合
休業手当等を含まない月のみで算定し、通常の月のみの平均額を「⑯修正平均額」に記載します。また「備考欄9」に、いつ解消したのか、いつ休業手当が支払われたのかを記載します。
こちらが定時決定についての解説でした。ケースバイケースで記載事項も変わるため毎回骨の折れる作業であるかと思います。
ここまで解説してきた通り、4月から6月の給与を管理し、被保険者である大多数の従業員の報酬を記入し提出しなくてはなりません。
繁忙期である年度始めから7月までに手書きや手計算での対応となると、かなりの業務量になりますし、担当者には労働時間、業務負担として重くのしかかっているのが現状です。
専門家である社労士の先生にアウトソーシングすることで、担当者の負担を軽減し正確に手続きをすることができるようになりますので、ぜひご一考ください。
その際は、定時決定の手続きがクラウドサービスに対応しているかも併せてチェックしてみると良いでしょう。
以上、定時決定についてご紹介してまいりました。ご参考にしていただければ、幸いです。