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【全労務担当必見】勤怠管理×Excelのリスク、クラウドサービスを導入する理由

総務省「情報通信白書(令和3年度版)」によると、何かしらのクラウドサービス(SaaS)を導入している企業は全体の68.7%にも達するそうです。また、利用の内訳としては、「給与、財務会計、人事」と回答した企業は37.8%で、5番目に多い回答でした。

参考情報:情報通信白書(令和3年度版)



当社は、企業へ給与計算・勤怠管理クラウドサービスの導入・運用支援を提供しておりますが、お問い合わせ件数は日々増加中で、人事労務分野でのクラウドサービスの活用が急速に進んでいることを実感しています。

一方で、上司、同僚などから「Excelで十分対応できているではないか」「Excelではなぜ不十分なのか」といった意見が上がり、困っている・クラウドサービス導入が頓挫してしまった といったお悩みをお伺いすることも少なくありません。

本記事では、最近特にお問い合わせを頂いている「勤怠管理」について、Excelを辞めるべき理由、クラウドサービスを使うべき理由をご紹介します。

ぜひ、ご一読ください。



勤怠管理クラウドサービス(SaaS)とは

勤怠管理クラウドサービスとは、出退勤管理(出勤・退勤時間、残業時間)、欠勤管理、休暇管理、残業申請、休暇申請・・・といった従業員の「勤怠」に関することを管理することのできるものです。また、クラウドサービス(SaaS)ですので、社内にIT知識やサーバーなどの設備が十分でなくとも気軽に利用することができます。



細かい機能はサービスごとに異なりますが、ほとんどに共通した機能の一部をご紹介します。

  • 打刻機能…ICカード利用、顔認証、位置情報取得、PC・スマホ経由など、多様な打刻方法が可能です。自社の働き方に合わせた打刻方法を選ぶことができます。
  • 管理者権限機能…利用者(従業員)、管理者などと権限を設定することが可能で、観られるデータや承認できる内容をそれぞれ設定できます。ガバナンス強化にも有効です。
  • ワークフロー機能…打刻、残業、休暇取得など、勤怠に関する申請・承認が可能です。
  • 休暇管理機能…有給や代休、振休、夏季休暇、慶弔休暇、企業独自の休暇などを設定し、従業員ごとの付与日数・残日数の管理が可能。
  • 打刻の修正機能…打刻漏れ、打刻間違いを簡単に修正することができます。ワークフロー機能を活用し、該当の従業員が申請した内容を上長や人事担当者が承認することも可能。
  • 残業時間管理機能…残業を申請制にする、上限時間を設ける、一定以上残業時間が発生したら自動で管理者・従業員双方に通知されるなど、長時間の残業を抑制するための機能があります。
  • シフト管理機能…勤怠管理クラウドサービスを使って、シフトを作成し、割り振ったり、管理することも可能です。小売業や医療現場など、シフト勤務で働く方が多い職場で活用されています。
  • データ集計機能…年、月、週、日・・・など指定した期間・単位でのデータ集計が容易にできます。部門や職種ごとの集計も可能で、CSVファイルでの出力も可能です。
  • データ保管機能…詳細条件はサービスにより異なりますが、プランを契約している限りは勤怠データをクラウドサービス上で保管しておくことが可能です。過去の勤怠状況も、簡単に探すことができます。



こちらでご紹介した機能は一部でして、他にも工数管理機能や多言語対応機能などがあります。残業時間管理機能、休暇管理機能やデータ集計機能を活用することによって、2019年に施行された「働き方改革関連法」に即した勤怠管理を行うこともできます。



クラウドサービスというと、「コスト削減」や「工数削減・業務効率化」「ペーパーレス」といったメリットを思い浮かべる方が多いかと思いますが、「法律の対応」や「ガバナンスの強化」といったメリットもあります。

また、勤怠管理クラウドサービスと給与計算クラウドサービスを併用することによって、限りなく手計算・目検を排除して、効率的に給与計算を行うことも可能です。

【主要な勤怠管理クラウドサービス】



勤怠管理クラウドサービスの基本情報を理解いただいたところで、次にExcelでの勤怠管理について考えていきましょう。





Excel勤怠管理をおすすめできない理由〜デメリット、リスク〜



「勤怠管理はExcelで十分」、そう仰る方のほとんどは「いま困っていないから良いじゃないか」といった考えを持っています。確かに、いま目の前で何かが起こっていないと、クラウドサービスに切り替える必要性を実感できないかもしれません。

こちらでは、Excelで勤怠管理をすることのリスクやデメリットをご説明します。いずれも大げさなことではなく、残念ながら「よく起こってしまうこと」です。

「クラウドサービスを導入するため」ではなく、「リスクを回避するため」と考えて頂いて、ぜひご一読ください。

※こちらに記載の内容は、ごく一部です。



手作業によるヒューマンエラーの誘発



ヒューマンエラーとは、人間が原因となって起きるミスや間違いのことで、人為的ミスとも言い換えられます。どれだけ気をつけていても、手入力・手作業がある以上はミスが起こる確率は一定以上発生してしまいます。

Excelでの勤怠管理には、雇用形態・働き方に合わせた関数の作成や、出退勤時刻や休暇申請での手入力がつきものです。また、勤怠管理の集計結果が正しかったとしても(ヒューマンエラーを回避できたとしても)、給与計算システムへの転記をする際にまたエラーのリスクが生じるのです。

勤怠管理は、給与にも紐づく重要なデータであり、従業員も高い関心を持って見ている場合が多いかと思います。ここでヒューマンエラーが発生すると、修正対応の工数が増えるだけでなく、従業員からの信頼失墜や、労務担当者への過度なプレッシャー・バッシングが起きてしまいます。

ヒューマンエラーのリスクを押さえるためには、手入力・目視での検査など、ひとに頼った作業工程を極力無くすことが重要です。

法改正やガイドラインへの対応が困難



もしも何かしらの法改正があったら、それに合わせて新たに計算式を組んだり、フォーマットを修正する必要があります。法改正の情報を常にチェックして、内容を正しく理解した上で計算式やフォーマット、運用に落とし込む必要がある、とても難易度が高い業務です。

仮に社内に法律にもExcelにも詳しい方がいたとしても、その方に当該対応が集中してしまい、業務の属人化に繋がって、業務の効率性低下や退職時の引き継ぎ困難などのリスクが生じてしまいます。

また、2019年には「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が発表されましたが、単なるExcelのデータ集計では、「客観的な労働時間の記録」として認められない可能性がありますので、この点も要注意です。

客観的かつ正しい勤怠情報を把握しづらい



Excelでの勤怠管理は、自己申告ですので、実態と合っているのかをまた別の方法で調べることが必要です。

また、従業員からすると都度Excelを開いて出勤・退勤・休憩時刻を入力したり、手書きをしたりといった手間が発生することですので、入力・記載漏れや誤入力が発生しやすいという特徴もあります。また、計算式を削除・編集してしまう可能性もあり、勤怠情報を把握するためにデータ・計算式の修正などの工数が発生してしまい、労務担当者の負担が増えてしまいます。

不正が行われるリスクが高まる



Excelであれば、上司や労務担当者の承認を得ることなく、本人が入力・修正・追記できてしまうため、不正が発生するリスクもあります。

仮に、意図的な手修正、入力漏れによって給与に不足が合った場合には、労働基準法違反として労働基準監督署から是正勧告を受けてしまう・労働争議に発展するといった、会社の信頼性に関わることが発生するリスクも高まってしまいます。

労働時間の水増しも容易で、もし発生した場合には対象者の懲戒解雇などの処分を検討せざるを得ない状況にもなってしまいます。

また、「勤怠データの改ざん」は、従業員だけでなく役職者が行うケースもあります。部下の長時間残業をごまかすため、勤怠管理のデータを改ざんしてしまうような場合です。

不正を未然に防ぐには、従業員への教育はもちろんですが、「そもそも不正ができない仕組みを設ける」ことも重要です。不正はしてはならないことですが、管理がずさんであると、「本来の勤務時間」を証明することが難しい場合があります。

属人化の加速 



Excelでの勤怠管理を行うには、誰かしらがフォーマットを作成することが必要です。この時点でマニュアルを整備し、法改正対応などの運用を設けておけば、ある程度は属人化を防ぐことができますが、業務の標準化のための仕事は得てして後回しにされがちです。

また、Excelは誰でも使いこなすことができるソフトウェアではありません。複雑な計算式やフォーマットの作成やメンテナンスができ、また労務知識もある方は少数かと思います。

このような状況では、Excel ファイルの中身・使い方が分かる方が限られ、組織全体で有効活用できない=属人化が進んでしまいます。

業務が属人化することによって、業務のブラックボックス化・特定のひとへの業務の集中(忙しさの偏り)・退職や休職時の引き継ぎ困難といったリスクが発生してしまいます。


解決策としての勤怠管理クラウドサービス(SaaS)



Excelで勤怠管理をすることによるデメリット、リスクについては十分に理解いただけたかと思います。こちらでは、それらの解決策としてという観点で、勤怠管理クラウドサービスでできること・導入によるメリットをご説明します。

ヒューマンエラーの防止



勤怠管理クラウドサービスであれば、手入力・手計算・転記を極力少なくすることができます。従業員の勤怠や有給の消化数などが自動で計算され、ExcelからExcel、紙からExcelなどとデータを転機する必要もなくなりますので、ヒューマンエラーの防止に繋がります。

運用時の設定、従業員への案内をきちんと行えていることが必要ではありますが、手作業・目検を減らすことによって、業務の負担軽減も実現できます。

また、勤怠管理クラウドサービスのデータを給与計算クラウドサービスに連携することも可能で、データ連携・自動連携可能なものを選定して設定すれば、さらなる業務効率化・強固なヒューマンエラー対策ができます。

不正打刻・打刻漏れの防止



勤怠管理クラウドサービスは、PC、スマホ、ICカードなど多様な方法での打刻が可能です。他にも、GPSを使用した位置情報による打刻や、指紋認証や顔認証なども可能で、打刻の精度を高めることができます。

また、打刻の間違い・漏れがあった場合には、従業員の打刻画面で通知が表示されますので、労務担当者の方が都度チェック・連絡をしなくとも、修正箇所・内容を知らせることができます。

打刻の修正・追加などは、申請・承認(ワークフロー)機能を用いることによって、上司や労務担当者が承認する仕組みとすることができますので、自己申告に頼らない正しい勤怠データを簡単に収集することができます。

これによって、不正や打刻漏れを防ぐことができ、厳密な勤怠管理を行うことによって労務問題の発生リスクを押さえることも可能です。

法改正対応が容易にできる



法改正があった場合には、クラウドサービスを提供する事業者(ベンダー)が、機能追加や設定方法の案内をしてくれます。ソフトウェアであれば、法改正による機能追加の場合にはユーザ側がアップデートをする必要があり、Excelであれば担当者自らが改正内容を確認してフォーマットや計算式を変更する必要があります。

クラウドサービスであれば、ベンダー側で機能追加などの作業を行えば、利用者側が何かしら操作をしなくとも自動で反映されるという簡便さがあるのです。

また、働き方改革関連法案に基づく残業時間の上限規制、有給休暇の取得義務などに対応している勤怠管理クラウドサービスであれば、確実な法対応が可能です。

業務効率化・ペーパーレス化によるコスト削減



勤怠管理クラウドサービスの導入においては、コストを気にされる方もいらっしゃるかと思います。従業員のPCに元々入っているExcelと比べると、クラウドサービスの場合には月額料金や書紀導入費がかかりますので、そこだけを見るとコストが上がったように思えます。

一方で、クラウドサービスを導入することによって、出退勤時間の手入力、データの転記や、勤怠時間の修正などを従業員に伝える工数を大幅に削減することができます。各種計算も自動で行われますので、業務効率化が進み、担当者の残業を削減したり、また浮いた時間でより付加価値の高い業務に取り組むこともできます。

従業員にとっても、面倒な作業がなくなり、PCやスマホで打刻や各種申請を行うことによって負担が経験されます。

また、Excelのフォーマットを紙に印刷して従業員に記入してもらったり、勤怠管理のデータを紙で保存したりといった場合には、使用する紙・インク・プリンター使用料を削減することができます。保存スペースの有効活用や、紛失リスクの軽減にも繋がります。

以上、勤怠管理をExcelで行う場合のリスクなどについてご紹介いたしました。これらの内容は、あくまで「多くの企業で共通する内容」です。

詳細は企業の課題・目指す方向によって異なりますので、まずは自社の情報や状況について整理をすることが重要です。その上で、社内外の関係者を巻き込みながら、勤怠管理クラウドサービスの検討を進めていきましょう。

また、当社へのご相談・お問い合わせでは、「顧問の社会保険労務士事務所がクラウドサービスに対応していなく、導入が進められない」といったお話を伺うこともあります。

クラウドサービスへの対応は士業事務所全体に関わることですので、一社だけのために意思決定できることではないかもしれません。事務所側の事情や工数も踏まえ、「クラウドサービス対応可能な顧問を新たに探す」ことも、選択肢の一つであると考えてみてはいかがでしょうか。

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