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聞かれたらきちんと答えられる?賞与の控除項目計算方法

賞与の支給月が近づいてくると使い道を考えたり、支払い方法で「ボーナス払い」を利用している場合は生活にも関わって来るので、賞与の手取り金額は誰にとっても気になるところです。

賞与支給の際も所得税や社会保険料が差し引かれるので、手取り金額が「思ったよりも少なく計画と変わってしまった」ということにならない為にも、従業員側も賞与の計算方法はきちんと知っておくべきでしょう。

そこで今回は、賞与支給にまつわるルールや、給与と賞与の計算方法の違いについてご紹介します!重要員からの質問にきちんと答えられるよう、しっかりとおさらいしましょう!

賞与の支給に法的義務はない!使用者がルールを定める

賞与は、一般的には「ボーナス」と呼ばれることも。多くの企業で6~7月の夏季賞与と12月の冬季賞与の年に2回支給され、この時期には「ボーナス商戦」という言葉もよく聞かれますね。

年に2回・夏と冬の支給というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、賞与の支給に法的義務はなく法令で支給の有無や計算方法、計算時期等も定められていないのです。ただし、賞与を支給する場合は相対的明示事項として、支給時期や計算方法などを就業規則への記載が必要となります。

つまり、賞与は使用者である企業が独自のルールを定めることができるので、労務担当や従業員本人にとってはそのルール通りに計算され、支給されているかどうかという所がチェックすべきポイントになります。

会社独自のルールとは?従業員も確認しておくべきポイント

会社独自のルールがあるということは、従業員側も就業規則等で確認しよく理解しておかなくてはなりませんが、一般的にはどのようなルールが設けられているのでしょうか。支給の条件など確認すべきポイントを見ていきましょう。

算定期間は?

賞与計算のため人事考課対象期間が定められている場合、新卒や中途入社については別途記載があることも多く見受けられます。

賞与支給月は?

「毎年、夏期および冬期」と支給月が明記されていない場合や、「7月初旬」「12月初旬」と支給月が明記されている場合があります。

賞与支給対象者は?

「賞与支給日に在籍するもの」と記載がある場合は、算定期間に在籍していたとしても支給日時点で退職しているものには賞与の支給がないということになるので注意しましょう。

賞与計算方法は?

基本給をベースにした計算が一般的ですが、「能力」や「勤務実績」などから計算されるケースも多いようです。

ちなみに公務員は?

公務員の賞与は「期末手当」「勤勉手当」として夏期と冬期の年2回支給され、国家公務員は法律、地方公務員は各自治体の条例で支給額が定められています。

賞与の支給が年間4回以上なら「報酬」としてカウントされる

賞与の年間支給回数によって、社会保険料の対象とされる場合があるということも頭に入れておくべきでしょう。

給与はそれぞれの標準報酬月額が決定、変更される際にも使われる「毎月支払われる賃金」ですが、それに対して賞与は「臨時的に支払われる賃金」にあたり、支給回数が年3回までと年4回以上で社会保険料の計算が変わってきます。

賞与の支給が年3回までの場合

「賞与」として取り扱われるため「賞与支払届」を提出する必要がありますが、一方で社会保険料の標準報酬月額計算の対象にはなりません。

賞与の支給が年4回以上の場合

「報酬」として取り扱われるため「賞与支払届」の提出は不要です。一方で社会保険料の標準報酬月額計算の対象となるため、7月~翌年6月に支給された賞与額を12等分した額が報酬月額に加算されます。

定時決定(算定基礎届)の詳細は「日本年金機構:定時決定(算定基礎届)」のページをご覧になってみてください。

賞与を支給しなかった場合

賞与支払い予定月に支払いの無かった場合は、事業所の所在地を管轄する年金事務所へ「不支給報告書」を提出する必要があります。

賞与から住民税は控除されない!給与の控除項目との違い

毎月の給与計算でも控除項目をそれぞれ計算していますが、給与の控除項目と賞与の控除項目には一部違いがあります。

給与からも賞与からも控除される項目

・健康保険料

・厚生年金保険料

・雇用保険料

・所得税

給与支給時のみ控除される項目

・住民税

「住民税」は前年1月~12月までの所得を用いて計算されますので、すでに給与支給の際に控除される本年の金額が確定しています。そのため、賞与支給時に住民税の控除はありません。

ただし、翌年の住民税額の計算には本年支給分の賞与額も含まれるため、全く計算に使われないという訳ではありません。

社会保険料の計算方法は?年間の標準賞与額には上限も

賞与計算の控除項目のうち健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料の計算には「標準賞与額」が使われてきます。「標準賞与額」の決め方を踏まえ、賞与支給時の各種社会保険料計算方法を見ていきましょう。

標準賞与額の決め方

「標準賞与額」は賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額で、賞与が支給される月ごとに決められます。また、標準賞与額には上限があり、健康保険・介護保険では年間累計額、厚生年金保険では1か月あたりの金額に上限があります。

・健康保険・介護保険の上限:毎年4月1日~3月31日までの年間累計額573万円

・厚生年金保険の上限:1か月あたり150万円

このように、年間と1か月あたりで上限が定められているためそれぞれチェックする必要がありますが、年の途中で標準賞与額累計が573万円を超えた場合や月ごとに決められた上限を超えた場合は、超えた金額に対する保険料がかからないということもポイントとなります。

健康保険料の計算

健康保険料=標準賞与額×健康保険料率÷2

健康保険料の計算には「標準賞与額」が用いられ、賞与から実際に控除される健康保険料は、事業主と被保険者が労使折半することになるためこのような計算になります。

厚生年金保険料の計算

厚生年金保険料=標準賞与額×厚生年金保険料率÷2

厚生年金時保険料についても「標準賞与額」が用いられ、こちらも事業主と被保険者が労使折半することになるためこのような計算になります。

介護保険料の計算

介護保険料=標準賞与額×健康保険料率÷2

給与の支給時40歳から徴収される介護保険は、賞与支給時も「標準賞与額」を用いて求め、原則として事業主と被保険者が労使折半となるのでこのような計算になります。

雇用保険料の計算

雇用保険料=賞与額×雇用保険料率

雇用保険の計算では「賞与額」に雇用保険料率を掛けて求めますが、保険料率は事業の種類や、「事業者」と「被保険者」どちらに該当するのかという点でも異なります。

所得税の計算には前月の給与が用いられる

社会保険料を計算した後所得税の計算をすることとなりますが、場合によって異なる計算式が用いられるのでそれぞれのケースに応じて正しく計算する必要があります。

通常の場合

源泉徴収税=賞与から社会保険料を差し引いた金額×税率

計算に使われる税率は、「前月給与から社会保険料等を控除した金額」と「扶養親族等の数」を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて求めます。

こちらが通常の場合の源泉徴収税を求める計算式ですが、賞与金額が前月給与の10倍を超える場合や、前月に給与の支払がない場合は計算式が変わってきます。

賞与金額が前月給与の10倍を超える場合

①賞与から社会保険料等を控除した金額÷6

②(①の金額)+前月給与から社会保険料等を控除した金額

③(②の金額)を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」にて参照

④(③の金額)-前月の給与に対する源泉徴収税額

⑤(④の金額)×6

前回の賞与支給から半年を超えている場合は、こちらの計算式「6」の部分に「12」を当てはめて計算します。

前月に給与の支払がない場合

①賞与から社会保険料等を控除した金額÷6

②(①の金額)を「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」にて参照

③(②の金額)×6

賞与の支給が年に1回の場合は、こちらの計算式「6」の部分に「12」を当てはめて計算します。

所得税計算の詳細は「国税庁:賞与に対する源泉徴収」のページをご覧になってみてください。

賞与計算のアウトソースもクラウドサービス対応がおすすめ

賞与計算は年に2回程度ではありますが、会社独自のルールや給与支給時とは異なる計算方法をきちんと把握しておかなくてはなりません。

また、「賞与支払届」は賞与支給後5日以内に提出しなくてはならず、賞与を支給しなかった場合も「不支給報告書」を提出する必要があるため、月次給与計算やその他業務を抱えながら労務担当が対応するとなるとどうしても大きな負担が掛かってしまいます。

それを解消するためには社労士事務所にアウトソースするのも一つの方法ですし、更にクラウドサービスに対応している社労士事務所であれば賞与の時期のコミュニケーションコストも大幅に削減できるので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

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