クラウドサービスに強い社会保険労務士の検索、
相談ができるプラットフォーム「社労士STATION」

【詳説】働き方のニュースタンダードになりつつある「テレワーク」 実施ガイド Part.1

サムネイル:テレワーク実践ガイド前編

※本記事は、前後編の「前編」です※

2020年4月、新型コロナウイルスの流行拡大による一回目の緊急事態宣言が発令され、政府からは出勤者の7割削減の要請が出されました。

総務省発表の「情報通信白書(令和3年度)」では、同時期には大手企業では80%以上・中小企業では50%以上の企業がテレワークを導入したといったデータがまとめられています。

一方で、緊急事態宣言明け以降はがくっとテレワーク実施率が下がり、中小企業ではテレワーク導入企業は全体の30%程度に留まっています。

職種や業種によっては、どうしてもテレワークが難しく、出社を前提とした働き方にならざるを得ない場合もあります。一方で、本来はテレワークができるはずなのに、社内環境が整っていないために実施ができていないような場合も少なくありません。

新しい働き方として定着しつつある「テレワーク」ですが、メリットやデメリット、また実施のための環境整備についてまとめました。

本サイト運営元であるTECO Designでは、コロナ禍以前より半数以上のメンバーがテレワークを実施しています。自社での実運用も踏まえておりますので、テレワークの恒常的な実施の可否判断や導入準備のご参考になさってください。

企業のテレワーク実施率

※引用元 総務省「情報通信白書(令和3年度)」第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済

テレワークとは

テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用した時間・場所にとらわれない柔軟な働き方のことです。自宅で働く「在宅勤務」、移動中や出先で働く「モバイルワーク」、シェアオフィスなどで働く「サテライトオフィス勤務」、旅行先で休暇を取りながら働く「ワーケーション(Work+Vacation)」などの種類があり、「リモートワーク」とも言われます。

新型コロナウイルスの流行拡大以降、政府や自治体ではリモートワークの導入を推進し、助成金や補助金の制度が設けられています。

すでに受付終了しているものもありますが、具体的には下記のようなものが挙げられます。

IT導入補助金では、主要人事労務クラウドサービス(SaaS)を提供する企業も事業者認定を受けていました。2022年度以降の内容やスケジュールは未発表ではありますが、クラウドサービス導入の際には、補助金の有無と対象企業をお調べすることをおすすめします。

※サービスサイト、コーポレートサイトにて発表している企業を中心にピックアップしております

テレワークのメリット

テレワークのメリット

テレワークを導入することによって、新型コロナウイルスの感染拡大防止はもちろんのこと、企業・従業員双方に多くのメリットがあります。

  • 通勤時間・費用の削減
  • オフィスの費用削減
    • 出社する機会が減れば、従業員にとっては通勤時間を大幅に削減することができます。引っ越したり、転職することなく職住近接が実現し、時間の有効活用ができます。また、会社のルール次第ではありますが、休憩時間に家事を消化したり、買い物に行くことができるため、プライベートと仕事を両立しやすくなります。
    • 企業にとっては、通勤費やオフィスの運営・維持にかかる費用を削減し、他のことへ投資することができます。
  • 採用競争力
    • 働く場所を自由化することによって、採用対象の方の範囲もぐっと広がります。出社を好む方ももちろんいらっしゃいますが、テレワークを選択できることによって、採用候補者への訴求力を強化することができます。
    • また、場所にとらわれない採用ができるため、採用対象者を広げることも可能です。
  • ダイバーシティの推進
    • 働く場所が自由になり、職住近接が実現することによって、従来はやむを得ず退職してしまったような従業員でも働き続ける環境ができます。
    • 様々な事情に伴う引っ越し、育児、介護、また怪我や病気によって出社が難しくなってしまった方であっても、テレワークであれば、従来と比べると格段に働きやすくなります。
    • 企業にとっては、貴重な人材の確保ができ、従業員にとっては働き続けることができるメリットがあります。

また、詳しくは下記でご紹介しますが、テレワークの実施にあたっては、クラウドサービスやオンラインで利用するツールの導入・活用が必要不可欠です。それにより、業務のペーパーレス化や効率化の推進にも繋がります。

メディアなどでは感染拡大防止についてクローズアップされることが多いような印象ですが、テレワークにはそれ以外にも多くのメリットがあり、これまで顕在化していなかった課題や「いずれ」と先延ばしになっていた課題を解消できる機会でもあります。

テレワークのデメリット(注意点)

一方で、テレワークは便利なばかりではありません。「コミュニケーションが難しくなる」「情報共有がしづらい」といったデメリットは、ツールを活用することによって解消できることではありますが、それでも注意すべき点はいくつかあります。

プライベートとの区別

テレワークは職住近接というメリットはありますが、裏を返すとプライベートとの区別が付きづらいとも言えます。仕事の時間とプライベートの時間が曖昧になり、メリハリがつかなくなり、結果的に長時間残業になってしまう可能性があります。

アンチウイルスソフトウェアを提供するアバスト社の調査によると、テレワークで終業後に仕事の連絡、確認、作業を行わず、完全に「オフ」になることができているリモートワーカーは半数以下(46.1%)で、17.6%は完全に「オフ」になることはないと回答しているそうです。

チャットツールなどの導入によって、どこでもいつでも仕事ができるようになった一方で、気を抜けない状態になっている方も多いようです。

参考:リモートワークで終業後、「オフ」になれていますか?| 禅僧で精神科医の川野泰周氏に聞く(アバスト社)

つながらない権利

また、2020年には、海外で「つながらない権利」のための法整備が進みました。「つながらない権利」とは、「従業員が勤務時間外に、仕事上の電話・メールなど一切の連絡を拒否できる権利」のことです。

日本では法整備などの議論はまだまだですが、業務時間外の上司からのチャットやメールは労使問題の原因として注目され始めています。

業務時間外の上司からの連絡や指示に対応する場合、もちろん勤務時間としてカウントする必要があります。残業代増加や従業員とのトラブル、心身の疲弊につながるおそれがあり、テレワーク実施においては考慮しておきたいことです。

時間外は緊急の要件のみにする、顧客に対して対応時間を伝える、チャットツールでの連絡であれば予約送信機能を活用したり、一定時間以降は翌日返信とするといった、運用で解消できることではあります。

いずれにしても、テレワークはメリットがある一方で、注意すべき点もあるのだと考慮した上で各種ルールやクラウドサービス、ツールの導入を検討することが必要です。

テレワーク実施のためのクラウドサービス(SaaS)導入

テレワーク

上記にて、「テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用した時間・場所にとらわれない柔軟な働き方」であるとご紹介しました。IT導入補助金などが示す通り、テレワークの実施にはICTの導入・活用が必要不可欠であります。

従業員がオフィス以外で働くための通信環境整備といった点では、モバイルWi-fiの支給。セキュリティ強化では、セキュリティソフトの導入やユーザー認証システムの導入など、様々な選択肢があります。

下記では、労務担当の方が大いに関わる「働き方」に焦点を絞って、具体的なサービス名を交えてまず導入すべきクラウドサービス(SaaS)についてご紹介します。

勤怠管理

テレワークでは、出社時と異なり私生活と仕事の切り分けが難しく、ともすれば長時間労働や深夜残業が状態化してしまうおそれがあります。また、働く場所が多様化するということは、「従業員の位置を把握しづらい」といったことも起きがちです。

加えて、仕事の合間に個人的な用事を済ませるなどのいわゆる「中抜け」が増えることも想定し、管理できるようにしておく必要もあるでしょう。

つまり、テレワークにおける勤怠管理では、下記のようなことを押さえておく必要があります。

  • 長時間労働の抑制
  • 勤務地(打刻場所)の把握
  • 中抜け対応

長時間労働の抑制

気をつけていても、ついつい残業時間が延びがちなのがテレワークの注意点です。紙やタイムカードで勤怠管理をしている場合には、月の労働時間を都度計算しないと把握できず、その時点での勤務時間・残業時間を知るには工数がかかります。

Excelで運用している場合には、従業員自身は把握することができますが、労務担当者は都度ファイルを提出してもらったり、またその内容が間違っていないか?数式が崩れていないか?などを確認する手間が発生してしまいます。

勤怠管理クラウドサービスであれば、打刻をする従業員側も労務や役職者など管理側も、簡単かつリアルタイムに日・週・月の勤務時間や残業時間を把握することができます。また、「出勤」「退勤」「休憩」などのボタンを押すだけで打刻が完了しますので、勤怠の間違いも発生しづらいというメリットがあります。

また、打刻漏れが発生した場合には、本人の打刻画面に注意書きが出る機能を備えたサービスが多く、打刻修正の対応も即座にできます。

また、指定した条件を満たした場合に注意書きを表示させる機能(アラート機能)や、残業時間の上限設定、残業の申告・承認機能などを活用することによって、長時間残業の抑制をすることができます。

【アラートの例】

  • 月の残業時間が◯時間を超えた場合
  • 遅刻回数が◯回を超えた場合
  • 月の残業時間が◯時間かつ休日出勤日数が◯日を超えた場合

勤務地(打刻場所)の把握

GPS打刻・ジオフェンシング打刻

勤怠管理クラウドサービスのほとんどには、位置情報を取得できる打刻機能があります。

例えば、KING OF TIMEやマネーフォワードクラウド勤怠、ジョブカン勤怠管理、HRMOS勤怠(旧:IEYASU)などではそれぞれGPSによる位置取得が可能です。

【参考情報】

GPS勤怠管理 for KING OF TIME アプリ
マネーフォワードクラウド勤怠ーGPSについて
ジョブカン勤怠管理ーGPS打刻をする
HRMOS勤怠 ※サイトリニューアル後に差し替え ー位置情報は取得できる?

加えて、「ジオフェンシング打刻」という機能があります。GPSと同じくスマートフォンやタブレットなどの端末の位置情報を用いて打刻しますが、事前に打刻を許可するエリアを指定できるというものです。テレワーク、サテライトオフィス勤務など様々な働き方に合わせた運用が可能で、出退勤打刻をした場所が勤務地として正しいかどうかの確認する手間を省くことができます。

上記で挙げたサービスでは、KING OF TIME・ジョブカン勤怠管理が対応しています。

中抜け対応

勤怠管理クラウドサービスでは、一日の休憩回数の制限がありません。

上記でご紹介をしたKING OF TIME、マネーフォワードクラウド勤怠、ジョブカン勤怠、HRMOS勤怠をはじめとし、当社で把握している限りは全てのサービスが中抜け対応をしています。

クラウドサービスの機能面では問題なく中抜け対応ができますが、何分以上の離席を中抜けとするのかなどの運用ルールを決めておいたり、労務上の運用を検討する必要があります。

テレワークにおいては、働いている姿が見えないため、本当に業務をしているのかが確認しづらいという課題があります。勤務状況を把握するため、個々のPCが動いているかを確認するシステムを導入する企業もあれば、チャットや電話にすぐに応対しないと仕事をしていないと思われてしまうのではとストレスを感じている従業員もいると伺うことがあります。

勤怠管理はもちろん重要なことではありますが、仕事をしているかどうかの監視や、在席確認のために気を張って通常業務に支障をきたすなどといったことがあっては、生産性が下がってしまいます。 

「◯分以上席を離れる時は申告する」など、管理側・従業員側両方が運用しやすいルールを設けることが重要です。

テレワーク運用に当たっては、管理側・従業員側の両方に負担が集中することなく、また両方が納得して運用できることがとても重要です。まずは、自社の勤怠管理の状況や部署ごとのローカルルール、そして目指したい方向を整理することをおすすめします。

・・・

以上、テレワークの基本的な考え方やメリット、デメリット、また働き方という観点からのクラウドサービス(SaaS)導入についてご紹介しました。

後編では、コミュニケーションを円滑化するためのサービスの導入や、社会保険労務士に依頼する際の注意点についてお伝えしてまいります。

こちらより、後編記事をご覧いただけます。

クラウド化のメリット一覧へ